お題:星々 役人 葉きり蟻


 いわゆる宇宙怪獣ってやつだ。その蟻に似た怪獣は巨大な身体をしていて、星屑を集めては自分の巣に持ち帰っている。そうして星屑の鉱石を分解して生きる生き物……キノコみたいなやつと共生している。それを餌にしているのだ。葉切り蟻の生態と似ている。

 小惑星帯にその怪獣の巣はあった。ロケットで宇宙を行きかう政府の役人……青年はそんな肩書を持つ苦労人だ。今日もまたその怪獣が宇宙ステーションを星屑と間違えて襲撃するのだ。

 宇宙服を着た青年はモニターに映る怪獣の影を発見した。この進路の先には宇宙ステーションがある。危険だ。

「光子魚雷から弾頭を外して……威嚇射撃だ」
「了解、ご主人様」

 少女の姿をした(彼の趣味)ロケットのメインコンピュータが武装を起動させる。装填された特殊兵器が怪獣をロックオンし、光速で射出された。弾頭は無いため、怪獣は恐ろしいまでの光を浴びて目をくらませ、宇宙空間に静止する。

「あれ、どうした? 弾頭は無いはずだよな」

 怪獣の様子がおかしい。硬く丸まったまま微動だにしないのだ。

「ご主人様。気絶しているようです」
「参ったな……彼らの巣まで曳航してやるか」

 ロケットは怪獣に接近し、アンカーを打ち込む。そしてそのまま小惑星帯に怪獣を引っ張ってやった。

「しかし何でまたこんな生き物が宇宙にいるんだろうな」
「それについては最新の学説が提唱されています」

 メインコンピューターはネットに接続してあり、様々な情報を処理していた。

「この怪獣は、遥か昔の宇宙文明が作った生物のようです。自然に生まれたものではないと」
「へぇ……」

 小惑星帯を抜けて、ようやく彼らの巣が見えてきた。アンカーから怪獣を開放し、巣に向けて放り投げる。ゆっくりと怪獣は巣に向けて移動していった。彼らの巣は星屑を集めてできた巨大な建築物だった。

 青年は、不思議とその形が宇宙ステーションの姿に似ているように感じたのだった。









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