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――鳥の街の観光客


 ナィレンから東に30キロほど行った先に鳥の街という都市があった。木々が生い茂るオアシスの岸辺に発達した街だ。亜熱帯の気候で一年中色とりどりの花と果実が咲き実る。極彩色の鳥たちは高値で他の地域に売れる産業のひとつだ。街中に鳥籠が吊らされ飼われている。

 その街に新婚旅行の世界一周旅行でレジルとミレウェが立ち寄った。
「見て見て! 鳥がたくさん……すごいさえずりの声ね!」 
 ミレウェは若干興奮気味に観光馬車から街を見る。街中が鳥籠のようだった。家一軒を改造して鳥籠になっている物すらある。

 街を覆うように格子の屋根が架けてあり、様々な鳥がとまっている。レジル達はフンを被らないよう日傘をさして観光馬車から下りた。レジルの被るシルクハットにも次々とスズメが降り立ち羽を休める。
「はは、これでは日傘の意味が無い。粗相をしないでおくれよ」

 彼らが降り立った街のメインストリートは鳥籠通りと呼ばれ観光客用に鳥を売る商店街だ。あちこちに見えるのは商品の鳥と鳥籠とフン避けのひさしだ。
「いらっしゃい! 帝都まで土産の配達も請け負ってるよ!」 
 商魂たくましい店員たちが次々と声をかける。

 そのとき一人の少女がレジルにぶつかった。少女は小さい声でレジルに詫びを入れそそくさと立ち去っていく。それを見た店員がワッハッハと笑いながら財布をすられたぜと教えてくれる。やれやれ、観光客あるところに物取りは必然か。レジルは少女を追いかけようとする。

 しかし少女は身を翻したと思うや、無数の白い小鳥になって空に飛び立っていった。魔法の心得があるらしい。鳥の群れは宙を舞い遠くの屋根に集合した。再び少女の姿に戻りレジルを笑う。右手には財布が握られていた。レジルはやれやれと追うのをやめる。

 野次馬の一人がレジルを笑って言った。
「これだから観光客は! プロには敵わないんだよ、ハハッ」 
 レジルは怒ることなくその野次馬にウィンクすると、日傘を畳み、それで地面をコンコンコンと3回小突いた。そしてシルクハットを取って少女にお辞儀する。

 すると屋根の上の少女はどきっとした顔になり、再び無数の白い小鳥に分散してしまった。レジルはシルクハットをその鳥の群れに向ける。鳥の群れは一匹残らず次々とシルクハットに吸い込まれていった。鳥の群れを飲み込んだシルクハットを日傘でトントンと叩くレジル。

 その瞬間また白い小鳥の群れが次々とシルクハットから飛び出し空の向こうへ逃げ去っていってしまった。最後にレジルはシルクハットから自分の財布を取り出し懐に戻す。ミレウェがやっと追い付き、注意してよねと彼に釘を刺した。レジルはそれを軽くあしらう。

 そして、あっけに取られている野次馬に向かってもう一度ウィンクをしたのだった。
「観光客にだって、プロはいるさ」 










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