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「世界に自由を、自由を世界に」
 石碑にはそう刻まれていた。石造りの廃墟が立ち並ぶ遺跡の中心で、男は地面を掘っていた。彼はポケットのたくさんついた作業服を着ており、スコップや、瓶を体にくくりつけている。石碑は廃墟の中心に立っており、夕陽を受けて長い影を土だらけの街並みに横たえていた。男の脇には、若い娘の助手が発掘品にラベルを貼って整理している。

「古代自由文明、100年の栄華もいまや土の下か」

 男は呟き、土に埋もれていた陶片をいくつか拾い上げた。土に埋もれた無数の陶片は、石碑を取り囲むように散らばっている。陶片には古代文字が墨で書かれていた。それらは貴重な考古学資料だ。男は考古学者であった。
 古代自由文明は、その名のとおり自由を愛した社会だった。人々は自由に生きることを人生の目標とし、思うが侭に生きた。幸せな時代は100年続いたという。その終わりはあっけないものだった。
 自由商人と呼ばれる職業が現れたのだ。自由商人は、自由に生きれない不自由な人から余った自由を買い、他の人間に自由を売りさばいた。さまざまな条件……出生や資産、健康上から自由に生きれない人間は、自らの自由権を売り、金に換えた。そして、自由バブルは膨れ上がり、社会の崩壊とともに消え去った。

「先生、その陶片は何なのです? 何か書いてありますけど」

 助手が作業の手を止め、男に問う。男は笑って陶片に書いてある文面を読み上げて言った。

「今日のパンを食べる自由の権利。そう書いてある。これは……右腕を使う自由の権利、だな。これは自由権の権利書だよ」
「そんなもの売って大丈夫だったのでしょうか」
「大丈夫じゃないさ。だが、文明崩壊直前には金のほうが重要になっていた。結局は、この世の自由は金次第。そうなってしまったのさ」

 助手は眉をひそめて残念がった。

「自由の国の末路にしては、悲しいことです」

 男はもうひとつ陶片を拾って言う。そんな大事な権利書が何故、この石碑の周りに散らばっているのか……。


「ある日街の人は気づいた。権利書なんか、みんな捨てて、旅に出ようってね。そうやって、世界に自由が広がっていったのさ」


書き出し.meで公開したものの転載です










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