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お題:太陽・カブトムシ・消えたカエル


 辺境には様々な怪異が起こる。これはある夏の日だった。太陽が照りつけ、酷い旱魃が南方辺境を襲った。河川は干からび、木々は枯れた。草は茶色になり命の全く感じられない地面が広がっている。

 帝都から派遣された官吏のメギルはその惨状を細かく記していた。彼は日光よけのローブとターバンを巻いて暑い日差しに耐えていた。農民はなすすべなく、日干し煉瓦の家の中でうずくまっているだけだ。水も食料も尽きようとしていた。

 メギルは何かできることは無いかと、記録をつけながら辺りを散策していた。すると、草むらから一匹の蛙が飛び出してきた。こんな日照りの中生きているとは幸運な蛙もいたものだ。そこで彼はある可能性に思い立った。

 この大地のどこかに、蛙が生きられるような水があるのではないか? 辺りは森だったのだが、木々は枯れて茶色の葉を散らしているだけだ。しかし岩場で見通しは悪く、どこかに湧水がある可能性も否定しきれない。彼は蛙を追いかけることにした。

 蛙はぴょんぴょんと跳ねながら山の方へ進んでいった。メギルは蛙を見失わないように慎重に追いかける。すると、蛙の目の前にバッタが現れた。蛙はそのバッタをひと飲みにして、さらにぴょんぴょん進んでいく。

 メギルはバッタを見つけて俄かに興奮してきた。ふもとには全く生命の気配は無い。あっても干からびた死骸だけだ。蛙に続いてバッタまで見つけることができた。さらに進めば、もっと生き物を見つけることができるのでは? 彼はさらに蛙を追いかけた。

 しかし彼は妙なことに気付いた。蛙が……最初見たときより一回り大きくなっているのだ。バッタを食べたからだろうか? それにしては急に大きくなり過ぎだ。そして蛙の目の前に新たな生物が現れた。かまきりだ。

 蛙はやはりかまきりをひと飲みにした。ここで、先程のメギルの疑問が確信に変わった。蛙が、さらに大きくなっているのだ。メギルの興味は新たに現れる生き物よりこの蛙に移っていった。蛙はいまやヒキガエルほどの大きさになっていた。

 山をさらに登っていく蛙。今度は蛙の前にカブトムシが現れた。それもただのカブトムシではない。人の頭ほどもあるカブトムシなのだ。その大きさにメギルは圧倒されるが、蛙は何事も無く大口を開けてそのカブトムシを飲みこんでしまった。そして蛙はグエグエと声を発し、急激に膨らみ始めたのだ。

 凄まじい勢いで膨張していく蛙。地震のような振動が発生し、メギルは倒れそうになって近くの枯れ木に掴まった。蛙は見上げるほどに大きくなり、ウォーッと大きな声を上げた。そして大きく跳躍する。

 蛙は真っ直ぐ太陽に向かって飛んで行った。そして太陽をひと飲みにする。辺りは真っ暗になり、大きな爆発音が響いた。メギルは目を見開いた。小さな光点が浮かび上がり、新たな太陽になったのだ。

 新しい太陽に照らされて空の様子が分かるようになった。蛙の姿はもうない。灰色の雲が爆発のあとに広がっている。その雲から、ざあざあと雨が降り注いだのだ。メギルは記録帳が雨に濡れないようにローブの中へしまい、急いで山を降りた。

 辺境には様々な怪異の記録が残されている。メギルの残した記録はこのようなものだった。あの蛙が何だったのか、旱魃を救ってくれたのか、いまは知る由も無い。

2014/1/15









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